産後の骨盤底筋トレーニング|尿もれ対策のやり方は1秒から、慣れたら10秒×10回

2026年7月22日 公開 / 2026年9月22日 更新
産後に骨盤底筋やウォーキングから無理なく運動を始める様子を示した線画イラスト

出産後、「早く体を戻したい」と焦る気持ちは自然なものです。でも、産後の体は出産という大きな負担を経ており、無理な運動やダイエットは禁物です。そのなかで最初に取りかかれるのが、腹筋運動ではなく骨盤底筋のトレーニングのほう。やり方は、尿を止めるときのように締めて、息を吐くだけです。締めている時間は1秒から始めて3秒、5秒と延ばし、慣れてきたら10秒を10回、2〜3セットが一つの目安とされています。くしゃみや立ち上がりでの尿もれが気になる人の入り口も、ここです。ただし運動そのものを再開してよい時期は自分で決めず、産後の健診などで医師の許可を得てからにしてください。まず何より、自分の体を大切にすることを優先してください。

産後の骨盤底筋トレーニング、押さえるのはここ
  • 締めるイメージは尿を止める・膣を引き上げる・お尻の穴をしめて引き上げるのどれかで
  • 力を入れる時間は1秒、3秒、5秒と延ばし、慣れたら10秒×10回×2〜3セット
  • 息は止めず、吐きながら締める。お腹がふくらむのは締めている場所が違うサイン
  • 産後6〜8週までは骨盤が不安定とされる時期。横座りなどの姿勢にも気をつける
  • 上体起こしのような腹筋運動は後回し。運動の再開は産後の健診で医師の許可を得てから

まず大前提:焦らない・医師の許可を得てから

いちばん大切なことから。産後の運動やダイエットは、自己判断で早く始めず、まず医師の許可を得てからにしましょう。

産後しばらくは、体が出産から回復する大切な時期です。産後の健診などで、運動を始めてよいかを確認してから、段階的に始めるのが安全です。許可が出ても、いきなり激しい運動やハードなダイエットは避け、体の回復に合わせてゆっくり進めましょう。とくに帝王切開の場合は、傷の回復に時間がかかるため、より慎重に、医師の指示に従ってください。

骨盤底筋トレーニングのやり方は「息を吐きながら締める」

産後の体づくりで最初に取りかかれるのが、この骨盤底筋のトレーニングです。出産で骨盤底筋は引き伸ばされ、それが尿もれや、膣から空気が抜けるような違和感につながることがあります。寝たままでもできるので、まだ体を起こして動くのがつらい時期でも取りかかりやすいのが利点です。とはいえこれも運動のひとつなので、いつから始めるかは健診のときに確認しておくと安心です。

出典:日本理学療法士協会「理学療法ハンドブック シリーズ10 女性のライフステージ」 同ハンドブックは、骨盤底筋に力を入れるイメージとして「尿を止める」「膣を引き上げる」「お尻の穴をしめて引き上げる」の3つを挙げ、力を入れる時間は1秒、3秒、5秒と徐々に長くしていくとしています。基礎のかたちは10秒×10回×2〜3セットで、仰向けまたはひじをついた四つ這いで息を吐きながら力を入れる方法です。産後については「産後6〜8週までは骨盤は不安定」とし、出産方法にかかわらず骨盤を支えるインナーユニットの機能回復を促すことが重要としています。運動時の注意としては「痛みが出ない程度で行いましょう」「痛みや不具合が生じた場合は医師や理学療法士にご相談ください」と書かれています(2026年9月22日確認)。

手順にすると、こうなります。

  1. 仰向けにひざを立てて寝るか、ひじをついた四つ這いになります
  2. 息を吐きながら、尿を止めるときのように骨盤底を締めて引き上げます
  3. 締めたまま1秒キープ。慣れてきたら3秒、5秒と延ばしていきます
  4. 力を抜いてゆるめ、これを繰り返します。基礎は10秒を10回、2〜3セットが目安です

くしゃみや立ち上がりでの尿もれについては、日本泌尿器科学会も「加齢や出産を契機に出現したりします」としたうえで、軽い腹圧性尿失禁なら「骨盤底筋訓練で尿道のまわりにある外尿道括約筋や骨盤底筋群を強くすることで、改善が期待できます」と説明しています(尿が漏れる・尿失禁がある・2026年9月22日確認)。「改善が期待できる」という書き方で、必ず治るとは書かれていません。そこまで含めて受け止めておくほうが、数日で結果が出なくても焦らずに続けられます。

締めているのに効いている気がしないときは、お腹を見る

やってみて「これで合っているのか分からない」となる人は多いところです。見るポイントは2つあります。

ひとつは息です。止めて力むと腹圧がかかって骨盤底を上から押してしまうので、吐きながら締めます。もうひとつはお腹で、同じハンドブックは産後すぐにできる運動として「膣をしめて、息を吐く。この時お腹が膨らまないように注意しましょう」と書いています。お腹がふくらんだなら、締まっているのは骨盤底ではなくお腹側だという合図です。鏡の前で立って試すより、仰向けで下腹に手を当てておくほうが分かりやすいはずです。

慣れてきたら、両ひざを立てた仰向けから息を吐きつつお尻を持ち上げる形(このとき息を吐きながらさらに骨盤底筋の引き上げを3回程度、およそ10秒)や、骨盤底筋を意識したスクワット10回×2〜3セットへ広げる方法も、同ハンドブックには示されています。ただし産後は、骨盤が不安定とされる6〜8週を過ぎているか、体調はどうか、医師の許可は出ているかを先に確かめてから進めてください。

産後の体に起きていること

産後の体は、妊娠・出産を通じて大きく変化しています。この変化を知ると、なぜ無理をしてはいけないかが分かります。

  • 出産に向けてゆるんだ骨盤や骨盤底筋が、まだ回復の途中にあります
  • おなかが大きくなる過程で、左右の腹筋の間が開く(腹直筋離開)ことがあります
  • 妊娠中の運動量の低下や出産の消耗で、体力・筋力が落ちています
  • 育児による睡眠不足など、ホルモンや体調にも波があります

こうした状態で無理に体を動かすと、回復を妨げたり、体を痛めたりすることがあります。「戻す」より、まず「回復させる」という順番が大切です。

【重要】産後すぐに避けたい運動

回復のために、産後すぐの時期には避けたい運動があります。とくに注意したいのがおなかに強い力をかける腹筋運動です。

  • 上体起こしやクランチなどの腹筋運動は、開いた腹筋(腹直筋離開)の回復を妨げ、尿もれ・腰痛・恥骨痛を招くことがあります
  • いきむ・強く踏ん張る動きは、ゆるんだ骨盤底に負担をかけます
  • ジャンプや走るなど衝撃の強い運動も、骨盤や骨盤底への負担が大きくなります

「早くおなかを引き締めたい」という気持ちから腹筋運動をしたくなりますが、産後すぐは逆効果になりかねません。まずは次に紹介する、体にやさしい運動から始めましょう。

腹直筋離開のセルフチェック

産後、「おなかがぽっこりしたまま戻らない」と感じる背景に、腹直筋離開(左右の腹筋の間が開いた状態)が関わっていることがあります。簡単なセルフチェックの方法を知っておくと、無理な腹筋運動を避ける目安になります。

あお向けに寝てひざを立て、おへその上あたりに指を当てながら、軽く頭を持ち上げます。このとき、左右の腹筋の間に指が何本分か入るくぼみを感じる場合は、腹直筋が開いている可能性があります。指が2本分以上すっぽり入るようなら、しばらく上体起こしなどの腹筋運動は避け、まずは骨盤底筋や深い呼吸で体幹をやさしく使うケアから始めましょう。

ただし、これはあくまで目安です。気になる場合は自己判断せず、産婦人科や、産後ケアに詳しい専門家に相談してください。正しい状態を知ることが、遠回りせずに回復する近道になります。

骨盤底筋のほかに、早い段階で足していい運動

骨盤底筋のトレーニングと並べて、体の負担が小さいものから少しずつ足していきます。

  • 骨盤底筋のトレーニングは、締める・ゆるめるを意識して動かすのが基本。やり方は上の「息を吐きながら締める」のとおりで、尿もれ対策の入り口にもなります
  • ウォーキングは、赤ちゃんとの散歩を兼ねて無理のない範囲で
  • 軽いストレッチで、こわばった体をゆっくりほぐす(「ストレッチと柔軟性」)
  • おなかを大きく動かす腹式呼吸で、体幹をやさしく使う

これらを体調のよい日に、無理のない範囲で。少しずつ体が回復し、生活に慣れてきたら(産後2〜4か月ごろが一つの目安とされます)、様子を見ながら運動を広げていきましょう。

食事は「減らす」より「整える」

産後は、授乳や育児で栄養も体力も必要な時期です。だからこそ、極端な食事制限は避けましょう。

  • たんぱく質・鉄・カルシウムなどを不足させないよう、バランスよくしっかり食べる(「鉄分不足とスポーツ貧血」)
  • 極端な糖質・カロリー制限はしない。体調にも、授乳中なら母乳にも影響しかねません
  • 水分をしっかりとる

無理な食事制限で急に体重を落とそうとすると、体調をくずしたり、育児に必要な体力が保てなくなったりします。「減らす」より「栄養を整える」のが、産後の体づくりの正解です。

数字より「体調と回復」を優先する

最後に、いちばん伝えたいことです。産後の体づくりで大切なのは、体重の数字ではなく、体調と回復です。

SNSなどで「産後すぐに元の体型に戻った」という話を見ると、焦ってしまうかもしれません。でも、回復のペースは人それぞれで、比べる必要はありません。育児だけでも大変な時期に、無理なダイエットで自分を追い込む必要はないのです。

体が回復し、心に余裕が出てから、自分のペースで。焦らずゆっくり取り組むことが、結局はいちばんの近道です。次のような場合は、運動を中止して医療機関に相談してください。

  • 出血が増えた、腹痛や強い痛みがある
  • 尿もれが続く、骨盤まわりの違和感が強い
  • 体調がすぐれない、強い疲労が続く

まとめ

  • 産後の運動は医師の許可を得てから。いきなり激しい運動・ダイエットはしない
  • 産後の体は骨盤・骨盤底・腹筋がゆるみ、回復途中。無理は禁物
  • 腹筋運動や衝撃の強い運動は産後すぐは避ける
  • まずは骨盤底筋・ウォーキング・軽いストレッチから段階的に
  • 骨盤底筋は息を吐きながら締めて1秒から。慣れたら10秒×10回×2〜3セット
  • 食事は「減らす」より「整える」。数字より体調と回復を優先

今日から動かせるものを一つだけ選ぶなら、骨盤底筋の1秒キープです。授乳中や、赤ちゃんを寝かしつけたあと仰向けになったタイミングでもできて、道具も着替えも要りません。10秒が続かなくても失敗ではなく、1秒から延ばしていく前提で書かれている運動です。体が回復して床で動けるようになり、医師の許可も出たあとに広げる先としては、壁を支えに使って体幹と骨盤まわりを整える運動もあります。何ができて何ができないかを正直に書いた「ウォールピラティスとは?」が、期待しすぎずに始めるときの目安になります。

ご注意: 産後の回復には大きな個人差があり、出産の状況(帝王切開など)によっても異なります。運動やダイエットを始める前に必ず産婦人科などの医師に相談し、許可を得てから、無理のない範囲で行ってください。出血・腹痛・強い痛み・尿もれ・体調不良などがある場合は、運動を中止して医療機関を受診してください。

よくある質問(FAQ)

骨盤底筋トレーニングは1日何回やればいいですか?
日本理学療法士協会の資料では、基礎のかたちを10秒×10回×2〜3セットとしています。ただし最初から10秒は締め続けられないのが普通で、力を入れる時間は1秒、3秒、5秒と徐々に延ばすよう書かれています。回数より、息を止めずに吐きながら締められているか、お腹がふくらんでいないかのほうが先です。
産後の運動・ダイエットはいつから始めていいですか?
自己判断で早く始めるのは避け、まずは産後の健診などで医師の許可を得てからにしましょう。許可が出ても、いきなり激しい運動はおすすめできません。体が回復し、生活にも慣れてくる産後2〜4か月ごろから、ウォーキングや軽いストレッチなどで無理なく始めるのが一般的とされます。帝王切開の場合はとくに慎重に、医師の指示に従ってください。
産後にやってはいけない運動はありますか?
産後すぐの時期に、腹筋運動(上体起こしやクランチなど)でお腹に強い力をかけるのは避けたほうがよいとされます。出産で開いた腹筋(腹直筋離開)の回復を妨げたり、尿もれや腰痛・恥骨痛を招いたりすることがあるためです。まずは骨盤底筋のトレーニングや軽い運動から。強い痛みや出血がある場合は運動をやめ、医師に相談してください。
産後ダイエットで大切なことは何ですか?
焦らないことです。産後は体に大きな負担がかかった後で、授乳や育児で栄養も体力も必要な時期です。極端な食事制限は体調や母乳にも影響しかねません。バランスのよい食事と、無理のない範囲の運動、十分な休養を土台に、自分のペースで進めましょう。体重の数字より、体調と回復を優先することが大切です。