サルコペニアとは?握力と歩く速さで分かる基準と、フレイルの違い

2026年7月16日 公開 / 2026年9月22日 更新
椅子から立ち上がる中高年の人物の線画イラスト。使っている太ももとお尻の筋肉をボルト色で強調

「最近、立ち上がるのがきつい」「つまずきやすくなった」。それ、加齢による筋肉の減少(サルコペニア)のサインかもしれません。

サルコペニアとは、加齢による筋肉量の減少と筋力の低下を指す言葉です。2016年10月に国際疾病分類に登録され、いまは疾患として位置づけられています(健康長寿ネット「サルコペニアとは」、2026年9月22日確認)。医療機関が使う目安はかなり具体的で、握力が男性28kg・女性18kg未満、歩く速さが秒速1.0m未満というラインが引かれています。ただし、それが分かったところで結論は変わりません。筋肉は何歳からでも増やせるので、基準を知る意味は「自分が今どのあたりか」を落ち着いて見るためだけにあります。

結論
  • サルコペニア=加齢による筋肉量の減少と筋力の低下。筋肉は40歳ごろから少しずつ減る
  • 基準は握力 男性28kg・女性18kg未満/歩行速度 秒速1.0m未満(AWGS2019)
  • フレイルは別物。心や暮らしまで含む広い概念で、サルコペニアはその身体面の中核
  • 何歳からでも筋トレで取り戻せる。カギは下半身とタンパク質
  • まずは椅子スクワット・かかと上げ・片脚立ちから。痛みなく続けるのが一番

サルコペニアとは?加齢で筋肉が減る仕組み

サルコペニアとは、加齢にともなって筋肉量と筋力が低下していく状態のこと。健康長寿ネットの解説では、筋肉(筋力)は40歳ごろから少しずつ減少しはじめ、70歳を超えたころから自覚症状を認めるようになるとされます。65歳以上の15%程度が該当すると考えられており、2019年の人口でみるとおよそ500万人にあたります(同ページ、2026年9月22日確認)。とくに下半身(太もも・お尻)の“大きな筋肉”ほど落ちやすいのが特徴です。

これが進むと、フレイル(心身の虚弱)やロコモティブシンドローム(運動器の衰えで移動機能が低下した状態)につながります。厚生労働省も、健康寿命を延ばすうえで筋力・身体活動の維持を重視しています(厚労省 身体活動・運動)。逆に言えば、筋肉を保つことは、将来「自分の足で歩き、自立して暮らす」ための土台なのです。

サルコペニアの診断基準は握力と歩く速さ。男性28kg・女性18kg・秒速1.0m

日本を含むアジアでは、アジアサルコペニアワーキンググループがまとめたAWGS2019という基準が使われています。医療機関がどこを見ているのかを知っておくと、自分の状態を測るときの目安になります。

見るもの基準(これを下回ると低下と判定)
握力男性 28kg未満/女性 18kg未満
歩行速度(6m)秒速1.0m未満
5回椅子立ち上がりテスト12秒以上
下腿(ふくらはぎ)周囲長男性 34cm未満/女性 33cm未満
骨格筋量(DXA)男性 7.0kg/m²未満/女性 5.4kg/m²未満

出典は日本サルコペニア・フレイル学会が公表したAWGS2019の改訂通知です(日本サルコペニア・フレイル学会「サルコペニア診断基準の改訂(AWGS2019発表)」、2026年9月22日確認)。握力の男性の基準は、AWGS2014の26kg未満から2kg引き上げられて28kg未満になり、歩行速度も秒速0.8m以下から1.0m未満に変わっています。

読み方で大事なのは、この表のどれか1つに当てはまってもサルコペニアと決まるわけではないことです。確定診断には骨格筋量の低下が必須で、そのうえで筋力か身体機能のどちらかが低下していればサルコペニア、両方ならば重症サルコペニアと判定されます。筋肉量はDXAやBIAといった装置で測るものなので、家では出せません。

一方で、下腿周囲長(男性34cm未満・女性33cm未満)と5回椅子立ち上がり(12秒以上)は、診療所や地域でサルコペニアの可能性がある人を拾い上げる入口として使われています。つまり、ふくらはぎの太さと椅子から立つ速さは、素人が見てもいい指標だということです。次のセルフチェックが役に立つのはこの理由からです。握力そのものの意味は「握力は寿命の指標?」に、5kg低下で死亡リスクがどう動いたかという研究まで書いてあります。

フレイルとの違いは、筋肉だけの話か、心と暮らしまで含むか

サルコペニアと並んでよく出てくるのがフレイルです。混同されやすいのですが、指している範囲がまったく違います。

フレイルは、英語の frailty に当てた日本語です。日本老年医学会は、frailty を「高齢期に生理的予備能が低下することでストレスに対する脆弱性が亢進し、生活機能障害、要介護状態、死亡などの転帰に陥りやすい状態」と説明したうえで、筋力の低下により動作の俊敏性が失われて転倒しやすくなるような身体的な問題のみならず、認知機能障害やうつなどの精神・心理的問題、独居や経済的困窮などの社会的問題を含む概念だとしています(日本老年医学会「フレイルに関するステートメント」2014年5月、2026年9月22日確認)。

指す範囲測るもの
サルコペニア骨格筋に限った状態筋肉量・握力・歩く速さ
フレイル身体+精神心理+社会体力のほか、認知機能、気分、独居や経済状況まで

同じステートメントで、日本老年医学会が「虚弱」ではなく「フレイル」という訳語を選んだ理由も説明されています。虚弱という言葉が「加齢に伴って不可逆的に老い衰えた状態」という印象を与えてきたのに対し、frailty には、しかるべき介入により再び健常な状態に戻るという可逆性が包含されているから、という理由です。ここがいちばん覚えておく価値のあるところで、フレイルもサルコペニアも、見つけた時点で終わりという話ではありません。

関係としては、サルコペニアはフレイルの身体面の中核にあたります。フレイルの判定に使われる筋力低下と歩行速度低下は、そのままサルコペニアの診断項目でもあるからです。筋肉に手を打つことは、フレイル全体に対する打ち手のうち、自分ひとりで今日から始められる部分だと考えると分かりやすいと思います。

なぜ中高年こそ筋トレなのか

「今さら鍛えても」と思うかもしれません。でも、中高年の筋トレには具体的なメリットがあります。

  • 下半身とバランス力が保たれるので、つまずきにくくなり、転倒や骨折の予防につながります。
  • 立つ・歩く・階段の上り下りがラクになり、自立した生活を続けやすくなります。
  • 筋肉は糖を使う場所でもあるため、量を維持することは代謝や血糖の面でもプラスに働きます。
  • 姿勢が整って見た目が変わり、活動的でいられるぶん気分も上向きます。

そして何より、筋肉は高齢になってからでも増えることが複数の研究で示されています。「もう遅い」ということはありません。

【セルフチェック】指輪っかテスト

自分のサルコペニアの傾向は、道具なしで大まかにチェックできます。有名なのが「指輪っかテスト」です。

  1. 両手の親指と人差し指で輪っかを作る
  2. 利き足でないほうのふくらはぎの、いちばん太い部分を軽く囲む
  3. 囲めるかどうかを見る
囲んだ結果見立て
囲めない(指が届かない)筋肉量は保たれている傾向
ちょうど囲めるやや注意
すき間ができる筋肉量が少なめの可能性。今日から対策を

メジャーがあるなら、指の輪より数字のほうが確かです。ふくらはぎのいちばん太いところを測って、男性34cm・女性33cmを下回るかどうかが、AWGS2019で症例を拾い上げるときに使われているラインです。あわせて、椅子から手を使わずに5回立ち座りして12秒以上かかるかどうかも見てください。こちらは身体機能の低下を判定する項目そのものです。

これらはあくまで拾い上げのための目安で、当てはまったからサルコペニアだと決まるわけではありません(確定には筋肉量の測定が要ります)。気になる場合は医療機関や自治体の体力測定を活用してください。

何をやればいい?下半身が最優先

中高年の筋トレは、難しい種目や重い器具は要りません。落ちやすく、生活に直結する下半身から始めましょう。自重でOK、痛みのない範囲で週2〜3回が目安です。

  • 椅子スクワットは、椅子から立つ・座るをゆっくり繰り返すだけ。太ももとお尻に効きます。
  • かかと上げは壁や椅子につかまって行います。ふくらはぎとバランス力の両方に効きます(「カーフレイズのやり方」)。
  • 片脚立ちは、つかまれる場所の近くで。バランス力は転倒予防に直結します。
  • お尻上げ(ヒップリフト)は仰向けでお尻を持ち上げる動きで、腰にやさしいのが利点です。

スクワットは太もも(前)・お尻・太もも裏を一度に鍛えられる“おトク”な種目。効く部位のイメージはこちらです。

スクワット
スクワットのフォームと、主に効く部位(太もも・お尻・太もも裏)を示した図
効く部位 太ももお尻太もも裏

慣れてきたら回数を増やし、余裕が出たら軽いダンベルやチューブで負荷を足します。ウォーキングと組み合わせるのも good(歩き方の工夫は「インターバル速歩」)。無理に毎日やる必要はなく、「休む日」も回復のために大切です。

タンパク質は“若い頃以上”に意識する

中高年の体づくりで、運動と並んで重要なのがタンパク質です。歳を重ねると、同じ量のタンパク質でも筋肉を作る反応が鈍くなる(同化抵抗性)とされ、さらに食が細くなって不足しがちになります。

だからこそ、毎食にタンパク質源(肉・魚・卵・大豆・乳製品)を少しずつ入れるのがコツ。1日の必要量の考え方は「タンパク質は1日どれくらい必要?」を参考にしてください。食事で足りない日は、消化にやさしく手軽なプロテインで補うのも一つの手です。骨の健康に関わるビタミンDも、あわせて意識したい栄養です。

よくある質問

70代・80代から始めても効果はある?
あります。高齢になってからのトレーニングでも筋力・筋肉量が向上したという研究は多く報告されています。無理のない範囲で、まず「立つ・座る」から始めましょう。
膝や腰が痛くても筋トレしていい?
痛みがあるときは無理をせず、まず医師に相談を。痛みの出ない範囲・可動域で行い、椅子を使うなど負担を減らす工夫をします。悪化する動きは避けてください。
ウォーキングだけではダメ?
歩くのは素晴らしい習慣ですが、有酸素運動だけでは筋肉の維持には不十分になりがちです。筋トレ(特に下半身)を週2〜3回加えると、サルコペニア対策として効果的です。

まとめ

  • サルコペニアは加齢による筋肉量・筋力の低下。40歳ごろから少しずつ進む
  • 基準は握力 男性28kg・女性18kg未満/歩行速度 秒速1.0m未満(AWGS2019)
  • フレイルは心と暮らしまで含む広い概念。サルコペニアはその身体面の中核で、可逆性がある
  • 下半身(椅子スクワット・かかと上げ・片脚立ち)から、週2〜3回・自重で
  • タンパク質を毎食こまめに。運動と栄養の両輪で

最初の一歩をどれにするか迷ったら、判断はひとつです。椅子から手を使わずに5回立ち座りして12秒以上かかるなら、椅子スクワットから。12秒を切るなら、かかと上げと片脚立ちを足してバランス側を先に埋めます。どちらにしても器具は要らず、今いる部屋でできます。測って記録しておくと、数週間後に同じテストをしたときに自分の変化が数字で見えるので、続ける理由にもなります。

体重を支えるのは骨も同じで、筋肉と骨は同じ刺激で一緒に育ちます。どんな動きが骨に効いて、どんな動きが効かないのかは「骨密度を上げる筋トレ」に、地面からの衝撃を受けるかどうかという1本の基準で整理してあります。

ご注意: 持病のある方、膝・腰・関節に痛みのある方、心臓・血圧に不安のある方は、運動を始める前に必ず医師にご相談ください。運動中に痛み・息苦しさ・めまいを感じたら中止してください。転倒予防のため、片脚立ちなどは必ずつかまれる場所の近くで行ってください。必要な運動量・タンパク質量には個人差があります。