ボディビルの規定ポーズ7種を図解|どこを見せて、何を審査されているのか

フロントダブルバイセップス・サイドチェスト・バックラットスプレッドの3つの規定ポーズをとる選手を並べた線画イラスト

ボディビルの大会を見ていると、選手が次々と決まった形のポーズをとっていきます。あれは規定ポーズと呼ばれるもので、見栄えのためだけにやっているわけではありません。一つひとつが「この部位を審査してください」と体の各所をアピールする役割を持っています。

この記事では、男子ボディビルの規定ポーズ7種を図解つきで解説します。どこを見せているのか、審査員は何を見ているのか、そして自分でやってみるとどこが難しいのかまで扱います。大会そのものの見方や採点基準は「ボディビル大会の見方・楽しみ方入門」に、観客の掛け声は「ボディビルの掛け声」にまとめています。この記事はポーズ1種類ずつを深掘りする担当です。

結論
  • 規定ポーズは体のプレゼンテーション。見せる部位が1つずつ決まっている
  • 前・横・後ろから全身をもれなく審査するために7種が組まれている
  • 同じ体格でもポーズの精度で順位は動く。ポーズ自体が競技の一部

なぜ「規定」ポーズなのか

自由なポーズだけだと、選手ごとに見せる部位がバラバラになり、公平な比較ができません。全員が同じポーズをとることで、審査員は同じ条件で選手を横並びに比べられます

7種の内訳を見ると、設計思想がはっきりします。

向きポーズ主に見せるもの
正面フロントダブルバイセップス腕と正面の全体バランス
正面フロントラットスプレッド上半身の幅
サイドチェスト胸と体の厚み
背面バックダブルバイセップス背中の細部
背面バックラットスプレッド背中の広がり
サイドトライセップス腕の裏側
正面アブドミナル&サイ腹筋と脚

正面3・横2・背面2で全身を一周し、さらに「幅」と「厚み」「大きさ」と「細かさ」を別々のポーズで確認できるようになっています。どれか1つが得意でも、7種すべてで穴がなければ上位には届きません。

規定ポーズ7種

1. フロントダブルバイセップス

フロントダブルバイセップス
フロントダブルバイセップスのフォームと、主に効く部位(力こぶ(上腕二頭筋)・肩(三角筋)・前腕)を示した図
効く部位 力こぶ(上腕二頭筋)肩(三角筋)前腕

正面を向いて両腕を曲げ、力こぶを最大に縮めるポーズです。最初にとることが多く、選手の第一印象を決めるポーズでもあります。

見せているのは腕だけではありません。審査員は同時に肩の丸み、胸の厚み、腹筋の締まり、脚の張りまで一度に見ています。腕に意識が向きすぎて脚の力が抜けると、下半身が貧弱に見えてしまいます。

2. フロントラットスプレッド

フロントラットスプレッド
フロントラットスプレッドのフォームと、主に効く部位(背中(広背筋)・胸(大胸筋))を示した図
効く部位 背中(広背筋)胸(大胸筋)

両手を腰に当て、わきの下から広背筋を左右に張り出すポーズです。見せているのは上半身の「幅」で、正面から見たときの逆三角形をどれだけ大きく作れるかが問われます。

背中の筋肉なのに正面から見せる、というのがこのポーズの面白いところです。広背筋を意識的に開く動きは日常でまず使わないため、初心者がもっとも「できない」ポーズのひとつです。

3. サイドチェスト

サイドチェスト
サイドチェストのフォームと、主に効く部位(胸(大胸筋)・腕(上腕二頭筋)・ふくらはぎ)を示した図
効く部位 胸(大胸筋)腕(上腕二頭筋)ふくらはぎ

体を横に向け、手前の腕を胸の前で組んで胸を張り出すポーズです。正面からは分からない体の「厚み」を見せます。

このとき手前の脚はつま先立ちになり、ふくらはぎも同時に収縮させます。胸・腕・ふくらはぎを一度に決める必要があり、体力の消耗も大きいポーズです。

4. バックダブルバイセップス

バックダブルバイセップス
バックダブルバイセップスのフォームと、主に効く部位(背中(広背筋・僧帽筋)・力こぶ(上腕二頭筋))を示した図
効く部位 背中(広背筋・僧帽筋)力こぶ(上腕二頭筋)

背中を向けて両腕を曲げるポーズで、ボディビルの花形とも言われます。背中の筋肉が地図のように浮き上がる様子が最大の見どころです。

背中は自分では見えないため、鏡を見ながら覚えることができません。動画で撮って確認するか、人に見てもらうしかない。ここが背面ポーズの難しさで、実力差が最も出やすい部分でもあります。

5. バックラットスプレッド

バックラットスプレッド
バックラットスプレッドのフォームと、主に効く部位(背中(広背筋))を示した図
効く部位 背中(広背筋)

背中を向けて広背筋を左右に開き、背中の「広がり」を見せるポーズです。バックダブルバイセップスが背中の「細かさ」を見せるのに対し、こちらは面積そのものを見せます。

同じ背中でも評価する観点が違うため、2種類が用意されています。細かい筋の分離は良いのに広がりが足りない、あるいはその逆、という差がここで露呈します。

6. サイドトライセップス

サイドトライセップス
サイドトライセップスのフォームと、主に効く部位(二の腕(上腕三頭筋)・胸(大胸筋))を示した図
効く部位 二の腕(上腕三頭筋)胸(大胸筋)

横向きで両手を背中側で組み、手前の腕を伸ばして二の腕の裏(上腕三頭筋)を強調するポーズです。

腕の太さは実は上腕三頭筋の占める割合が大きく、力こぶだけ鍛えているとこのポーズで一気に見劣りします。フロントダブルバイセップスと対になっていて、腕を前と後ろの両面から審査する構成になっています。

7. アブドミナル&サイ

アブドミナル&サイ
アブドミナル&サイのフォームと、主に効く部位(お腹(腹直筋)・太もも(大腿四頭筋))を示した図
効く部位 お腹(腹直筋)太もも(大腿四頭筋)

両手を頭の後ろに回して腹筋を絞り込み、同時に片脚を前に出して太ももに力を入れるポーズです。腹筋と脚を一度に見せます

減量の仕上がりが最も残酷に出るポーズでもあります。腹筋は体脂肪が落ちていないと形が見えないため、絞り込みが甘い選手はここで差をつけられます。息を吐きながら腹筋を締めるので、呼吸のコントロールも必要です。

規定外だが観客が沸く「モストマスキュラー」

7種の規定ポーズには含まれませんが、大会でもっとも盛り上がるポーズがモストマスキュラー(通称「カニ」)です。全身の筋肉を体の中心に寄せ、力強さを爆発させます。

フリーポーズやポーズダウンで使われることが多く、規定ポーズが「正確に見せる」ものだとすれば、こちらは「迫力で圧倒する」ためのポーズです。掛け声がもっとも飛ぶ場面でもあります。

【意外と知られていない】ポーズは想像以上にきつい

見ているぶんには静止しているだけに見えますが、規定ポーズは全身に力を入れ続ける全身運動です。

  • 数十秒間、複数の筋肉を同時に最大収縮させ続ける
  • 減量で体力が落ちきった状態でそれをやる
  • しかも表情は余裕そうに見せなければならない

慣れていない選手は本番で脚が震える・呼吸が乱れる・顔に力みが出るといったことが起こります。だからトップ選手ほどポーズ練習を早い段階から積んでおり、ポーズの完成度そのものが競技力として扱われます。

同じ筋肉量でも、弱点を目立たせない角度を作れる選手のほうが評価されます。審査は選手を並べて相対的に比較するので、見せ方の差はそのまま順位差になり得ます。「ポーズが上手い」は、この競技では立派な実力です。

自分で練習するときの、よくある失敗

大会に出ない人でも、ポーズをとってみると自分の弱点がはっきり分かります。左右差、背中の発達不足、絞りの甘さが、鏡の前で一目で出ます。ただし初めてやる人がつまずくポイントはだいたい決まっています。

よくある失敗どうするか
鏡だけで背面ポーズを確認しようとする背中は構造上、鏡では見えません。スマホで動画を撮るのが唯一の方法です
力むうちに息を止めてしまう血圧が上がります。息を吐きながら締めるのが基本です
上半身に集中して脚の力が抜ける下半身が貧弱に見え、全体のバランスが崩れます。脚は常に張っておきます
体が仕上がってから練習を始めるポーズは体力を使うので、減量で消耗しきってからでは間に合いません

とくに最後の1つは、大会に出る人がもっとも後悔しやすい点です。ポーズ練習は減量より先に始めておくほうが、結果的に間に合います。

なお、力を入れ続ける動作は血圧が上がりやすいことが知られています。厚生労働省の身体活動・運動ガイドでも、強度の高い運動は体調に合わせて段階的に行うことが基本とされています。高血圧や心臓に不安がある方は無理をしないでください。

まとめ

  • 規定ポーズは「この部位を見てください」という体のプレゼン。7種で全身を一周する
  • 正面3・横2・背面2で、幅と厚み、大きさと細かさを別々に審査できる構成
  • 背面ポーズは自分の目で確認できないため実力差が出やすい
  • アブドミナル&サイは減量の仕上がりが最も残酷に出る
  • ポーズは全身運動で、完成度そのものが競技力として評価される

大会の見方全般は「ボディビル大会の見方・楽しみ方入門」、実際に出場する側の話は「フィジーク大会の団体選び」もあわせてどうぞ。

ご注意 ポーズは全身に力を入れ続ける動作で、血圧が上がりやすくなります。高血圧・心疾患などの持病がある方、体調に不安がある方は事前に医師にご相談ください。規定ポーズの種類や順序は団体・カテゴリーによって異なるため、出場を検討している場合は所属団体の最新の規定を必ず確認してください。

よくある質問(FAQ)

規定ポーズは何種類ありますか?
男子ボディビルでは7種が基本です。フロントダブルバイセップス、フロントラットスプレッド、サイドチェスト、バックダブルバイセップス、バックラットスプレッド、サイドトライセップス、アブドミナル&サイの7つ。ただし団体やカテゴリーによって採用するポーズや順序が異なることがあるので、出場する場合は所属団体の規定を必ず確認してください。
モストマスキュラーは規定ポーズに入りますか?
通常の規定ポーズ7種には含まれません。フリーポーズやポーズダウンで使われることが多い、規定外の人気ポーズです。全身の筋肉を寄せて力強さを見せるポーズで、観客がもっとも沸く場面のひとつでもあります。
ポーズの練習はいつから始めればいいですか?
大会に出るなら、減量の終盤ではなく早い段階から始めるのが一般的です。ポーズは全身に力を入れ続ける動作で想像以上に体力を使い、慣れていないと本番で震えたり呼吸が乱れたりします。体が仕上がってから練習を始めると、間に合わないことが多いです。
同じ体格でもポーズで順位は変わりますか?
変わり得ます。審査は選手を並べて相対的に比較するため、同じ筋肉量でも見せ方が上手い選手のほうが評価されやすくなります。弱点を目立たせない立ち位置や角度の作り方も含めて、ポーズは競技の一部です。