インフォームドチョイスとは?市販品を毎月抜き打ち検査する認証|「うっかりドーピング」を防ぐプロテインの選び方
大会に出る人がプロテインの袋で探す目印になるのは、「INFORMED CHOICE」か「INFORMED SPORT」のマークです。どちらも英国の検査会社LGCが運営する、サプリメントに禁止物質が混ざっていないかを調べるプログラムで、インフォームドチョイスは認証の前に3ロットを分析し、認証後は店頭で売られている商品を毎月抜き打ちで買い直して検査します。ただ、運営元自身が「すべての禁止物質を調べられる検査はない」と書いているとおり、マークは混入のリスクを下げる目印であって、陽性にならない保証ではありません。
- 「うっかりドーピング」は、サプリに表示されていない禁止物質を知らずに摂って陽性になること。本人に悪気がなくても責任は競技者が負う
- インフォームドチョイスは年12ロット以上を店頭から抜き打ち検査。全ロットを出荷前に調べるのはインフォームドスポーツのほう
- JADA自身のサプリ認証は2019年3月31日で終了。いまJADAは製品の分析も認証もしていない
- 2027年の禁止表は英語版が公開済み。2026年12月31日までは2026年版が適用される
「うっかりドーピング」は、表示にない成分でも本人の責任になる
「うっかりドーピング」は、禁止薬物を意図して使ったのではなく、サプリメントや薬に入っていた禁止物質を知らないまま摂り、検査で陽性になってしまうことを指す言葉です。原因が本人の知らない混入であっても、違反の責任を負うのは競技者自身という点が、この問題をややこしくしています。
なぜ表示を見ても防ぎきれないのか。日本アンチ・ドーピング機構(JADA)は、サプリメントの扱いを次のように説明しています。
「サプリメントは、医薬品とは異なり、法律上では「食品」に分類されます。「食品」には、商品の成分表に全ての原材料を記載する義務がありません。」
「もし、表示されていない物質が原因で、アンチ・ドーピングのルール違反になった場合でも、アスリートはその責任を自身でとらなくてはなりません。」
同じJADAのよくある質問には、製品名を示されてもその製品に禁止物質が入っているかどうかを機構として判断することはできないとも書かれています。表示されていない物質は調べようがなく、動植物や天然物に由来する原料もすべての含有物質が明らかになっているわけではないから、というのがその理由です。つまり、成分表を読むだけでは足りず、外部の検査を受けた製品を選ぶという発想がここで出てきます。
インフォームドチョイスとは|認証前に3ロット、認証後は毎月の抜き打ち検査
インフォームドチョイス(Informed Choice)は、LGCが運営するサプリメントの品質保証プログラムです。公式サイトには、認証までの流れが4段階で書かれています。
| 段階 | 中身 |
|---|---|
| 1. 製品と製造の審査 | 製品と原料を見て禁止物質のリスクを評価。製造については品質システム、交差汚染を防ぐ教育、原料と仕入れ先の管理、追跡と回収の手順を書類で審査する |
| 2. 認証前の検査 | 1と並行して、少なくとも3つの製造ロットから3検体を認定分析機関で検査し、禁止物質による汚染が無いことを確かめる |
| 3. 認証と掲載 | 1と2が済むと認証書が出て、ロゴを使えるようになる。製品と検査済みのロットが公式サイトに載る |
| 4. 認証後の検査 | 店頭や通販で運営チームが商品を買い、毎月抜き打ちで検査する。製品と製造施設も定期的に見直される |
検査対象は禁止物質と混入のおそれがある物質の285種以上。プログラムの位置づけは、汚染のリスクを最小限にするための定期検査とされています。
ここで押さえておきたいのは、抜き打ち検査が年に12ロット以上をランダムに選ぶ方式だという点です。運営元は、インフォームドチョイスを「アクティブな生活を送る人」向け、厳しいドーピング検査を受けない週末のスポーツ愛好家向けのプログラムと説明しています。
インフォームドスポーツとの違いは「全ロットを出荷前に調べるか」
名前がよく似たインフォームドスポーツ(Informed Sport)も、同じLGCが運営しています。検査の手順と技術、調べる物質の数(285種以上)は共通で、違うのは検査のタイミングと想定している利用者です。国内には、JADAが関わってきた別の枠組みもあるので、まとめて並べます。
| 制度 | 運営 | 検査のタイミング | 想定している人 |
|---|---|---|---|
| インフォームドチョイス | LGC | 認証前に3ロット。認証後は店頭品を年12ロット以上、毎月抜き打ち | アクティブな生活を送る人 |
| インフォームドスポーツ | LGC | すべてのロットを市場に出す前に検査 | トップアスリートや、薬物検査を受ける職業の人 |
| JADAサプリメント認証プログラム | JADA | 2019年3月31日で終了 | ー |
| サプリメントの製品情報公開の枠組みに関するガイドライン | JADAが設置した有識者会議が2019年に発行 | 製造施設の審査を前提に、製品分析を年1回以上して結果を公開する | 認証ではなく「リスクの低減のための指標」 |
ドーピング検査の対象になる大会で戦うなら、ロットごとに出荷前の検査を通しているインフォームドスポーツのほうが条件としては厳しい、というのが運営元自身の書き分けです。インフォームドチョイスの製品が危ないという意味ではなく、手元の袋のロットが検査済みかどうかを確かめられる範囲が違う、ということです。
認証マークがあっても陽性リスクがゼロにならない3つの理由
マークを見て安心しきらないほうがいい理由は、運営元とJADAの資料から3つ挙げられます。
| 理由 | 原典に書かれていること |
|---|---|
| 手元のロットが検査されたとは限らない | インフォームドチョイスの認証後の検査は、店頭品から年12ロット以上をランダムに選ぶ方式。全ロットを出荷前に調べるインフォームドスポーツとは、運営元自身が分けて説明している |
| 検査できる物質に限りがある | 禁止表は名前の載っていない類似の物質まで含む開かれたリストで、人の尿や血液といった検体を調べる前提で書かれている。そのため、禁止とみなされうる物質をすべて調べられるサプリ検査プログラムはない(インフォームドチョイスのよくある質問) |
| 国内のガイドラインも「完全な安全」をうたっていない | JADAの有識者会議によるガイドラインは、示す情報を「リスクの低減のための指標」と位置づけ、完全なる安全を保証するものではないと明記している |
メーカーが「検査をクリア」と書いていても、原典が言えるのはここまでです。それでも、無認証の製品より混入の確率を下げる手段としては意味があります。検査のある大会に出る人ほど、認証の有無を選ぶ基準の1つに入れておく価値があります。
袋と公式サイトで確かめる手順
- 袋や商品ページのロゴが「INFORMED CHOICE」か「INFORMED SPORT」かを見る。似た名前の別制度もあるので、名称まで読む
- 運営元の公式サイトで製品名を検索し、認証製品として載っているかを確かめる。インフォームドスポーツは、ブランド名・製品名に加えてロット(バッチ)番号でも検索できるので、手元の袋の番号まで照らし合わせる
- 個人輸入の海外品は、日本向けの表示が無いぶん確認の手間が増える。販売元の説明だけで判断せず、公式サイトで同じ製品かを確かめる
- 飲み始めたら、製品名とロット番号を控えておく。JADAは、使うものを使用前に自分で確認し、使用記録を保管するよう競技者に求めている
製薬会社のプロテインを例に|メーカー公式の表示をどう読むか
具体例として、製薬会社の日本新薬が出しているホエイプロテイン「WINZONE(ウィンゾーン)」の公式ショップの表示を見てみます。商品ページには、品質マネジメントシステムの国際規格の認証を受けた工場で作っていることと、インフォームドチョイスを取得していることが書かれています。運営元の認証製品一覧にも「WINZONE WHEY PROTEIN」が載っています。
| 項目 | 公式ショップの表示 |
|---|---|
| 取得している認証 | インフォームドチョイス |
| 1食あたりのたんぱく質 | 約20.5〜22.3g(風味によって1食29〜35g) |
| 配合 | ビタミン11種・ミネラル4種(カルシウム・鉄・マグネシウム・亜鉛) |
| 風味 | プレーン・抹茶・リッチバナナ・カフェオレ・ミルクティーなど11種類 |
| 製造 | 国内製造(原料のホエイたんぱくは外国製造) |
読み方のポイントは、認証の名前が「インフォームドスポーツ」ではなく「インフォームドチョイス」だという点です。上の表のとおり、全ロットの出荷前検査ではなく、店頭品の定期的な抜き打ち検査の対象になっている製品ということになります。プロテインのカテゴリーページには「WADAの禁止物質リストに基づく検査をクリア」とも書かれていますが、運営元のLGCが「すべての禁止物質を調べられる検査はない」としている以上、検査で見つからなかったという意味に読むのが妥当です。
2027年の禁止表と、薬を確かめる先
禁止表は毎年1月1日に更新されます。JADAは2026年9月28日に、WADAが公表した2027年の禁止表(英語版)を掲載し、2026年12月31日までは2026年の禁止表が適用されること、日本語版は翻訳作業のあとに公開することを案内しています。WADAの「主要な変更の要約」で、サプリやボディメイクに関係しそうなのは次の2点です。
| 区分 | 2027年の変更点 |
|---|---|
| S0 未承認物質 | 人への使用が承認されていない多くのペプチドが禁止の条件を満たすとして、ペプチドが例示として名前つきで載った。名前が無くても禁止にあたる場合があり、健康を害するおそれもあると注意している |
| S8 カンナビノイド | カンナビジオール(CBD)自体は禁止されていない。ただし大麻草から抽出したCBDには禁止物質のTHCがさまざまな濃度で含まれうる |
あわせて、禁止表の上位にある世界アンチ・ドーピング規程も、2027年1月1日に新しい版が発効します。禁止表の本体ではなく「監視プログラム」に載っている成分の扱いは、エクジステロンの記事で、禁止物質ではないのに競技者が避けるべきとされる理由まで書いています。
サプリではなく薬の場合は、確かめる道具があります。JADAのよくある質問は、服用しようとしている薬が禁止物質かどうかを調べる方法として、薬と成分の検索システム「Global DRO(日本版)」と、最新のアンチ・ドーピング規則の知識を持つ薬剤師である「公認スポーツファーマシスト」への相談を挙げています。禁止物質かどうかは天然由来かどうかに関係しないこと、治療使用特例(TUE)は禁止された物質ごとに認める手続きなので漢方生薬にはTUEを付与できないことも書かれています。
認証品を選んだほうがいい人、こだわらなくていい人
- ドーピング検査のある大会に出る人。ボディビル・フィットネスの団体ごとの検査方針は、日本のボディビル大会団体ガイドで、JBBF・FWJ・ZeniXを並べて比べています
- パワーリフティングなど、公認大会にアンチ・ドーピング規定がある競技の人。公認大会がアンチ・ドーピングの対象で、全国大会では抜き打ちの検査もあることはパワーリフティング大会ガイドにあります
- 部活動から大会を目指す中高生・大学生。競技を続けるかどうかに関わらず、早いうちに選ぶ基準を知っておいて損はありません
- 競技に出なくても、原材料や品質管理の情報が開示されている製品を選びたい人
大会に出る予定がなく、日々のたんぱく質補給が目的なら、認証の有無より価格・味・1食あたりのたんぱく質量で選んでかまいません。その場合の比べ方は「プロテインの選び方」に、ホエイ・ソイ・カゼインの違いから1食あたりのコストの比べ方までまとめています。
認証について勘違いしやすいこと
- 「認証があれば効果も高い」。認証が見ているのは禁止物質の混入リスクで、筋肥大の効果を示すものではありません
- 「市販のプロテインは危ない」。日常のたんぱく質補給で使う分には、検査を受ける立場でなければ気にする話ではありません。問題になるのは検査対象の大会に出る人です
- 「サプリさえ選べば薬は自由」。国内の規則違反の一覧には、ツロブテロールやメチルエフェドリンのように医薬品の成分として使われる物質も並んでいます。薬はGlobal DROやスポーツファーマシストで別に確かめます
まとめ
- 「うっかりドーピング」は、表示にない禁止物質を知らずに摂って陽性になること。責任は競技者自身が負う
- インフォームドチョイスは認証前3ロット+店頭品の毎月の抜き打ち。全ロットの出荷前検査はインフォームドスポーツ
- JADAのサプリ認証は2019年に終了。国内のガイドラインも「リスク低減の指標」で、完全な安全は保証しない
- 2027年の禁止表は英語版が公開済みで、適用は2027年1月1日から
最初の一歩は、いま飲んでいるプロテインの袋を手に取って、ロゴの名前とロット番号を控えることです。インフォームドスポーツなら公式サイトでそのロットが検査済みかを照らし合わせ、マークが無いなら、次に買い替えるときに認証品を候補に入れれば十分です。出場する大会の検査方針がまだ分からないなら、JBBFとは?で、毎年度のアンチドーピング講習が出場の条件になっている仕組みから確かめておくと、サプリ選びをどこまで厳しくすべきかの見当がつきます。
ご注意: ドーピング規定は競技団体・大会ごとに異なり、禁止表は毎年1月1日に更新されます。出場予定の大会がある場合は、サプリメントの認証の有無にかかわらず、主催団体の最新の規定と、その年の禁止表国際基準を確認してください。服用中の薬がある方は、自己判断で中止せず、医師や公認スポーツファーマシストに相談してください。持病がある方は、サプリメントの利用前に医師に相談してください。