ベンチプレスは何キロからすごい?平均は未経験の男子大学生で46kg|全日本に出られる線は74kg級で180kg
ベンチプレスが何キロからすごいかは、重さだけでは決まりません。体重60kgの人の80kgと、体重100kgの人の80kgでは中身がまるで違うからです。先に物差しを3本出しておくと、筋トレ未経験の男子大学生を測った論文の平均が46.0kg、体重と同じ重さ(体重1倍)が中級の目標、日本パワーリフティング協会(JPA)の全日本ベンチプレス選手権に申し込める線が男子74kg級で180kgです。
ネットの「男性の平均は40kg」という数字は、国の統計ではありません。よく引かれる出どころは、大学の体育の授業で筋トレを選んだ1年生を測った2009年の論文です。自分の重さがこの3本のどこにいるかは、最大重量を試さなくても、ふだん挙げている重量と回数から推定できます。
「ベンチプレスの平均」という公的な統計は無く、新体力テストにもベンチプレスの項目はありません。
よく引かれる平均は、未経験の大学1年生(男性67名)の1RMで46.0kg。体重の約0.76倍でした。
ジムでの目安は体重1倍が中級。体重70kgなら70kgです。
競技の線は全日本クラシック男子74kg級で180kg(体重の約2.4倍)、日本グランプリで142.5kg。
「ベンチプレスの平均」は国の統計に無い|ネットの「男性40kg」は未経験の大学1年生の値
握力や反復横とびなら、スポーツ庁の体力・運動能力調査に年代別の平均があります。ところがベンチプレスは、その調査で使う新体力テストに入っていません。20〜64歳向けの実施要項に並ぶテスト項目は、握力・上体起こし・長座体前屈・反復横とび・急歩・20mシャトルラン・立ち幅とびの7つで、急歩とシャトルランはどちらかを選ぶ形です。重りを使う項目は1つもありません(スポーツ庁「新体力テスト実施要項(20歳〜64歳対象)」、2026年10月5日確認)。
それでも「平均」を名乗る数字が出回っているのは、測った研究があるからです。解説記事で根拠として挙げられることが多いのが、九州大学健康科学センターの林直亨氏らの論文「週1回の大学授業における筋力トレーニングが筋力に与える影響」(体育学研究54巻、2009年)でした。原典を開いて、誰を測った数字なのかを確かめました。
| 測った人 | 平均体重 | ベンチプレス1RM |
|---|---|---|
| 未経験の男子1年生(授業前・67名) | 60.7kg | 46.0kg |
| 同じ男子(週1回を7〜10週続けた後) | 61.8kg | 53.7kg |
| 未経験の女子1年生(授業前・36名) | 51.0kg | 21.8kg |
| 同じ女子(週1回を7〜10週続けた後) | 51.3kg | 27.7kg |
| ソフトボールを選んだ男子(対照群) | 59.2kg | 43.8kg |
数字は論文の表1にある平均値で、ばらつき(標準偏差)は男子の授業前で±8.6kgあります。論文のどの表にも「40kg」という数字は無く、ネットの「平均40kg」は、この46.0kgや対照群の43.8kgを丸めて伝えたものと見られます。
「平均46kg」をそのまま自分に当てはめられない理由
この論文が測ったのは、筋トレをしたことがない大学1年生です。大人の男性全体の平均でも、ジムに通っている人の平均でもありません。もう一つ見落とされやすいのは、たった週1回の授業を7〜10週続けただけで、男子の平均が約8kg伸びている点です。実験群の全員が、ベンチプレスかアームカールの1RMを10%以上伸ばしていました。
つまり「平均」は、始めて2か月で簡単に追い越せる場所にあります。ジムに通い始めた人が「平均を超えた」と感じても、それは未経験者との比較にすぎません。ここから先の位置づけには、別の物差しが要ります。フォームがまだ固まっていない段階なら、重さを比べる前に「ベンチプレスのやり方」で、肩甲骨の寄せ方から脇の角度まで6つの手順を先に押さえておくほうが、結果として数字も早く伸びます。
女子の平均は21.8kg、体重の約0.43倍
同じ論文の女子は、平均体重51.0kgで1RMが21.8kgでした。体重比にすると約0.43倍で、男子の約0.76倍とはかなり差があります。ネットには「女性は40kgでもすごい」という言い方もありますが、出典が書かれているものは見つかりませんでした。体重50kgの女性が40kgを挙げると体重の0.8倍で、この論文の未経験の女子平均のほぼ2倍にあたります。根拠のある比較をするなら、この数字のほうが使えます。
何キロからすごいかは体重比で見る|体重70kgなら70kgで中級、105kgで上級の入口
重さを体重で割ると、体格の違う人どうしでも比べられます。競技のベンチプレスが体重で階級を分けているのも同じ理由です。ここでは、上の論文と JPA の標準記録という出どころのある数字を両端に置き、そのあいだを CoolFitness の目安で区切りました。1倍と1.5倍の区分は公的な基準ではなく、このサイトの目安です。
| 段階 | 体重比の目安 | 根拠 |
|---|---|---|
| 未経験者の平均 | 約0.76倍 | 林ら(2009)男子1年生46.0kg÷体重60.7kg |
| 中級の目標 | 1倍 | CoolFitnessの目安(フォーム記事と同じ基準) |
| 上級の入口 | 1.5倍 | CoolFitnessの目安 |
| 日本グランプリに出られる線 | 約1.9倍 | JPA標準記録 男子74kg級142.5kg÷74kg |
| 全日本に出られる線 | 約2.4倍 | JPA標準記録 男子74kg級180kg÷74kg |
体重1倍と1.5倍を、体重ごとの重さに直すと次のとおりです。ジムで使うプレートの刻みに合わせて、2.5kg単位で書いています。
| 体重 | 体重1倍(中級の目標) | 体重1.5倍(上級の入口) |
|---|---|---|
| 55kg | 55kg | 82.5kg |
| 60kg | 60kg | 90kg |
| 70kg | 70kg | 105kg |
| 80kg | 80kg | 120kg |
| 90kg | 90kg | 135kg |
よく言われる「100kg挙がればすごい」を体重比に直すと、体重60kgの人なら約1.67倍で上級の入口を越えていますが、体重100kgの人なら1倍で中級の目標にあたります。同じ100kgでも、体重によって意味が倍近く変わるということです。重さだけで人と比べて落ち込んだり浮かれたりするより、自分の体重で割った数字を半年ごとに見比べるほうが、伸びているかどうかがはっきり分かります。
競技の「すごい」は全日本の標準記録|男子74kg級180kg、女子63kg級87.5kg
ジムの中の比べ合いを離れて、いちばん客観的な物差しになるのが競技団体の標準記録です。JPA の全国大会は勝ち上がり制ではなく、階級ごとに決められた記録を期限内に公認大会で挙げた人だけが申し込めます。言いかえると、国内のトップ層が集まる大会に「入場できる重さ」がそのまま数字で公開されています。
次の表は、ベンチプレス1種目の全国大会のうち、ベンチシャツのような補助ウェアを着ないクラシック部門(一般)の標準記録です。日本グランプリは、標準記録が全日本より低く置かれた全国大会です。
| 階級(体重の上限) | 日本グランプリ | 全日本ベンチプレス選手権 |
|---|---|---|
| 男子59kg級 | 127.5kg | 160kg |
| 男子66kg級 | 130kg | 170kg |
| 男子74kg級 | 142.5kg | 180kg |
| 男子83kg級 | 150kg | 190kg |
| 男子93kg級 | 160kg | 200kg |
| 女子52kg級 | 62.5kg | 80kg |
| 女子57kg級 | 67.5kg | 85kg |
| 女子63kg級 | 70kg | 87.5kg |
出典はJPA技術委員会「(改)令和8年度 JPAが主催する全国規模の競技会における出場標準記録について」(2026年2月13日付)と、第5回日本グランプリ開催要項です(どちらも2026年10月5日にPDF原典で確認)。
男子74kg級の全日本は、体重74kgちょうどの人でも体重の約2.4倍です。体重1倍を中級の目標とするなら、全日本はその2.4倍の場所にあります。女子63kg級の87.5kgは体重の約1.39倍で、男女で体重比の線がかなり違うことも分かります。ブロック大会で優勝して推薦を受ける道もありますが、その場合も標準の97%(切り捨て)にあたる「B標準」は越えていなければならず、男子74kg級なら172.5kgです。
標準記録を出す大会への登録のしかたや、記録の有効期間、階級をまたぐときの決まりは「日本パワーリフティング協会(JPA)とは」に、2026年度の全国大会の日程とあわせてまとめてあります。ここでは標準記録を、自分の重さを測る物差しとして借りるだけにします。
自分の1RMは挙げた回数から推定する|60kgを8回挙がるなら約75kg
物差しに当てるには、自分の1RM(1回だけ挙げられる最大重量)が要ります。ただ、いきなり1回の限界に挑むのはおすすめしません。潰れたときにバーが胸や首の上に落ちる種目なので、一人で試すのは危険です。上の論文でも、授業中のベンチプレスには必ず2人の補助者を付けていました。
代わりに、ふだんのセットで挙げた重量と回数から推定します。CoolFitness の「1RM計算ツール」は、よく使われる Epley 式と Brzycki 式の平均で1RMを出し、0.5kg単位に丸めています。入れられる回数は12回までです。
| ふだん挙げている重量と回数 | 推定1RM | 体重70kgの人なら |
|---|---|---|
| 60kgを8回 | 約75kg | 約1.07倍で中級の目標を越えている |
| 70kgを5回 | 約80kg | 約1.14倍 |
| 80kgを3回 | 約86.5kg | 約1.24倍で上級の入口の手前 |
推定値は式による計算なので、実際に挙がる重さとは数kgずれることがあります。物差しに当てる目的なら、それで足ります。
出典:厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」情報シート 「筋力トレーニングについて」は、成人および高齢者に筋トレを週2〜3日実施することを推奨しています。実施上の注意として、「漸進性過負荷の原則」に従って慣れたら少しずつ負荷を高めること、休息日を設けること、血圧の急な上昇を抑えるために息をこらえないことを挙げています(2026年10月5日確認)。1RMの測り方そのものには触れていません。
重い重量ほど歯を食いしばって息が止まりやすくなるので、最大に近い重さを触るほどこの注意は効いてきます。毎回限界まで追い込まずに、その日の重さを「あと何回できそうか」で決める方法は「RPE・RIRとは」に、見積もりがずれやすい場面まで書いてあります。1RMを試さずに強度を管理したい人は、そちらから始めると安全です。
その「100kg」は大会で通る重さか|ジムの記録と競技の記録の見分け方
ジムで「100kg挙がった」と聞いても、それが上の表の数字と同じ物差しで測れるとは限りません。競技のベンチプレスには、ジムでは見逃されがちな決まりがあるからです。自分の記録を表に当てる前に、次の4つを確かめてみてください。
- 胸で止めたか。競技ではバーを胸まで下ろして一度静止させ、審判の合図を待ってから押し上げます。胸で弾ませた(バウンドさせた)重さは、そのままでは比べられません。
- お尻が浮いていないか。押し切る瞬間にお尻がベンチから浮くと、競技では失敗になります。ジムでは見逃されやすい動きですが、重さが増えるほど出やすくなります。
- 胸まで下ろしたか。胸の手前で切り返すハーフの挙上は、可動域が短いぶん重く挙がります。上の論文の測定も、バーを胸に付けてから腕を伸ばしきるまでを1回と数えていました。
- 補助者が触っていないか。上げきる途中で補助の手がバーに触れたら、その回は自力の記録ではありません。
4つとも満たしていれば、表の標準記録と横に並べて構いません。逆に、どれか1つでも外れた記録で全日本の線と比べると、実際の位置より上にいると錯覚します。大会に出るつもりがなくても、胸で一呼吸止めてから挙げる練習を混ぜると、自分の本当の1RMが分かります。審判の合図の種類や判定の仕組みは「ベンチプレスの大会に出てみよう」で、尻上げが失敗になる場面まで具体的に紹介しています。
体重を書かない「〇kg挙がった」も比べられない
もう1つの見分けどころは体重です。SNS や動画で見る重さには、挙げた人の体重が書かれていないことがよくあります。同じ120kgでも、体重60kgの人なら体重の2倍で、日本グランプリの59kg級の線(127.5kg)まであと7.5kgの位置にいます。体重120kgの人なら1倍で、中級の目標にあたります。体重が分からない記録は、すごいかどうかの判断材料になりません。自分の記録を残すときも、挙げた日の体重を一緒にメモしておくと、半年後に体重比で伸びを比べられます。
体重1倍から先は「小さく足す」で伸ばす|全セットこなせたら2.5kg
未経験の平均から体重1倍までは、上の論文の伸び方を見ても、続けていれば数字が素直に付いてくる区間です。そこから先は、毎回重さを足すと潰れる日が増えてきます。慣れたら少しずつ負荷を上げるという厚労省の情報シートの原則(漸進性過負荷)を、ここでは「ふだんのセットで決めた回数を全セットこなせたら次の回に2.5kgだけ足し、こなせなければ同じ重さでもう一度挑む」という目安に置きかえます。この小さな上げ方にすると止まりにくくなります。厚労省の情報シートは筋トレ全体を週2〜3日行うよう勧めているので、ベンチプレスもその日のどれかに入れれば足ります。ベンチプレスだけを伸ばそうとせず、スクワットやデッドリフトと組んで全身を鍛えておくと、押すときに脚と背中で体を支える土台もできます。3種目の組み合わせ方は「筋トレの基本BIG3」で、それぞれの種目でやりがちな失敗とあわせて紹介しています。
重さが増えてきて手首が反って痛むと感じたら、手首を固定するリストラップを巻くと安定します。JPA の全国大会でも使える用具ですが、全国大会とブロック大会ではIPF公認品に限られます。
まとめ
- ベンチプレスの平均を出した国の統計は無い。よく引かれる数字は、未経験の大学1年生(男子46.0kg・女子21.8kg)を測った2009年の論文のもの
- 何キロからすごいかは体重比で見る。体重1倍が中級の目標、1.5倍が上級の入口(どちらもCoolFitnessの目安)
- 競技の線は、全日本ベンチプレス選手権クラシック部門の男子74kg級で180kg、女子63kg級で87.5kg。日本グランプリは男子74kg級142.5kg
- 比べるのは胸で止め、お尻を浮かせず、補助なしで挙げた記録だけ
どこから手を付けるか迷ったら、まず今週のベンチプレスで挙げた重量と回数をメモし、1RMを推定して体重で割ってみてください。未経験者の平均(約0.76倍)に届いていなければフォームを固めるのが先、1倍の手前なら2.5kgずつ足す時期、1.5倍を越えていれば標準記録の表がそのまま次の目標になります。重さを足すペースと同じくらい大事なのが、ベンチプレスの日を週に何回入れるかで、週2〜3回から始める理由と、回数を増やすときの分割法の考え方は「筋トレは週何回がベスト?」に、部位ごとの回復時間の表とあわせて書いてあります。
ご注意: 1回だけの最大挙上は、セーフティーバーを正しい高さにセットしたラックか、補助者がいる状態でのみ試してください。高血圧や心臓の病気で治療中の人は、重い重量を扱う前に医師に相談してください。肩や手首に痛みが出たまま重さを足し続けるのは避け、痛みが続くときは整形外科を受診してください。JPA の標準記録は年度ごとに改定されるので、大会を目指す場合は JPA 公式サイトで最新の通達を確認してください。
よくある質問(FAQ)
- ベンチプレスの男性の平均は何キロですか?
- 国が取っている統計はありません。スポーツ庁の新体力テスト(20〜64歳)の7項目にベンチプレスは入っていないからです。よく引かれる数字は2009年の体育学研究に載った論文のもので、筋トレ経験のない大学1年生の男性67名(平均体重約61kg)の1RMが46.0kg、週1回の授業を7〜10週続けたあとで53.7kgでした。社会人や経験者の平均ではない点に注意が要ります。
- ベンチプレスは何キロ挙がればすごいと言えますか?
- 重さそのものより体重比で見るほうが比べられます。体重と同じ重さ(体重1倍)が中級の目標で、体重70kgなら70kgです。競技の物差しでは、日本パワーリフティング協会の全日本ベンチプレス選手権クラシック部門(一般)に申し込める標準記録が男子74kg級で180kg、日本グランプリが142.5kgです。体重74kgの人なら、それぞれ体重の約2.4倍と約1.9倍にあたります。
- 女性のベンチプレスは何キロからすごいですか?
- 未経験の女子大学生36名を測った同じ論文では、平均1RMが21.8kg(平均体重51.0kg、体重の約0.43倍)でした。競技の線は、全日本ベンチプレス選手権クラシック部門(一般)の女子63kg級が87.5kg、日本グランプリが70kgです。体重50kgの女性が40kgを挙げれば体重の0.8倍で、未経験の平均の2倍近い重さになります。